有機JAS認定で使える登録農薬一覧 2021年版

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今年度の時点で有機JAS栽培で使える登録農薬をリストアップしました。有機栽培で使える農薬の種類が年々増えてきており栽培者としては選択肢が増えて助かります。なぜなら農作物を完全に無農薬で作ることは無理だからです。農薬といっても化学合成された殺虫剤や殺菌剤のように毒性が強くないので環境への負荷も小さいです。初めて有機栽培に挑戦される人にもわかりやすい説明を試みました。減農薬栽培を目指されるみなさまの参考になれば幸いです。

JASとは英語でJapanese Agricultural Standardsといって日本の有機食品や資材の認証制度です。根拠となっているJAS法という法律は「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和 25 年法律第 175 号)」です。日本農林規格のことをJAS規格と呼びます。JAS規格に適合した食品や資材などの農林物資のみに有機JASマークを表示することができます。この認証を受けていない食品に有機やオーガニックなどという言葉を使うことは法律で禁じられています。

このページでは登録農薬のうち有機JAS栽培で農薬にカウントされない薬剤や製剤をリストアップしています。農薬なのにカウントされない薬と聞くと胡散臭い印象がありますが、日本の法律で決まっているので正しいということになっています。言葉をもっと飾り立てて書くと農薬を使っても農薬を使ったことにならない魔法の農薬です。今から紹介する農薬や製剤は残留農薬や残留微生物が問題となっている種類も含まれますのでご利用にはご注意ください。

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有機JASとは

有機JASとはどのようなものなのでしょうか。私たちは知っているようで意外とこのことについて詳しく知りません。食料品店で買い物をしていると次のような緑色の葉っぱをかたどったロゴが付いた食品を見かけます。農林水産省の有機食品の認証制度についてのページでは認証機関に認定されたものだけが「有機〇〇」や「オーガニック〇〇」「有機畜産物」という名前や以下のロゴを使って農産物や食品などを販売することができると説明しています。有機JASは毒性が強い化学薬品を使っていない、遺伝子組み換えをしていない、製造過程で毒性の強い化学薬品を使っていないことの証です。

有機JAS栽培で使える登録農薬の一覧表
有機JASマーク ロゴ

農産物や畜産物や加工品が認定されるとこのようなロゴマークを品物に表示することができます。

有機JAS栽培のメリット

一般的に有機JASに認定された農産物や食品は殺虫剤などが使われた食品よりも高い価格で販売することができます。健康志向の消費者もこのロゴマークが付いている食品を安心して買うことができます。この規格を順守しながら農産物や畜産物を生産すると消費者に信頼されリピート購入に繋がる利点があります。消費者は毒性の強い化学薬品や遺伝子組み換え食品の混入を心配することなく有機JASマークが付いている食品を購入することができます。

認定されなくてもメリットはある

仮に有機JASの認証を望まなくても生産者にはメリットがあります。この法律で決められた「有機・オーガニック」という言葉以外の名称は仕えます。法律で禁止された以外の言葉を使って農産物や畜産物を販売することができます。例えばイオンで売られているタスマニアビーフはオーガニックではありませんがパッケージに成長ホルモン剤を使っていないと書かれています。直売所で売られているホウレンソウには無農薬と書かれたものもあります(おそらく水に溶かした化学肥料などは使っています)。特別栽培農産物の基準は有機JASよりもかなり緩いです。消費者にとってこのような表示は不信や混乱の素でもありますが、キャッチフレーズの背景や製品表示を読むなどしてしっかりと食品や農産物・畜産物に対する知識をつければ少しでも安全な商品を選ぶことができるようになります。

家庭菜園では減農薬栽培の参考にすることができます。

有機JASのデメリット

しかし良い事ばかりではありません。この規格にはデメリットもあります。認証を得るために生産コスト以外に審査や更新に金銭的な負担が生じます。規模が小さな農家にとっては不利な点のほうが利点よりも大きくなる場合があります。生産者も有機栽培用の農薬を使いすぎて残留農薬が基準を超えるリスクもあります。なぜなら有機栽培に使用できる農薬は殺虫効果や殺菌効果が薄いからです。

生産コストが価格に上乗せされるので消費者にとってもデメリットがあります。健康に配慮するためには消費者側にも安全な食材を買うために費用がかかることになります。有機JASが広まらない理由はこれらの生産と認証に関わるコストの高さにあると思います。

もしも審査で承認されていないのに「有機〇〇」「オーガニック〇〇」と農産物や食品に表示すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。産地偽装など違反が悪質な場合はそれ以上の罰が下されます。

このような厳しい罰則があるため収入が少ない小さな農家が実際にオーガニック栽培をしていても認証機関の審査に合格して農水大臣から認定されるまでは自ら作った農産物に有機と表示することはできません。

海外の農産物について

アメリカとカナダ、スイスとオーストラリアの4か国については2021年の時点で有機JASと同等品質の農産物などについて「有機〇〇」と日本で表示しロゴを添付できる仕組みになっています。ただし、はちみつなどは適用外となります。有機JASと表示できるのは日本を含め、世界で五か国だけに限られます。

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有機JAS登録農薬一覧

ここで述べる有機JASの栽培基準を守れる登録農薬は「有機農産物のJAS規格別表等への適合性評価済み資材」のうち「別表2」に該当する農薬だけです。有機栽培では化学合成された農薬や肥料の使用を避けるよう努めなければいけません。やむを得ない場合として次に掲げる農薬の使用が認められています。農薬のご使用にあたり、情報をよくご確認したうえで規格に合ったものをご使用ください。

ここでは2021年時点で最新版(平成29年度最終改正・平成30年施行版)の規格に基づいて使用可能な農薬や製剤をリストアップしました。主な農薬のタイプは細菌を殺すための殺菌剤、 害虫を殺すための殺虫剤、天敵や展着剤などのその他、重曹や食酢などの特定防除資材に大別されます。さらに細かく分類すると農薬や製剤の分類は次の通りです。

有機JAS殺菌剤

農作物に有害な微生物を殺すための薬剤です。

  • 無機硫黄剤
    • 硫黄くん煙剤
    • 硫黄粉剤
    • 水和硫黄剤
    • 石灰硫黄合剤
  • 無機銅剤1
    • 銅水和剤(炭酸カルシウム水和剤の加用)
  • 無機銅剤2
    • 銅粉剤
  • 無機銅・硫黄剤
    • 硫黄銅水和剤
  • 無機硫黄材
    • 石灰・硫黄合剤
  • その他の殺菌剤
    • 炭酸水素カリウム水溶剤
  • ボルドー剤調製用
    • 硫酸銅(ボルドー剤調整用に限る)
    • 生石灰(ボルドー剤調整用に限る)
  • 炭酸水素ナトリウム剤
    • 炭酸水素ナトリウム水溶剤
    • 炭酸水素ナトリウム銅水和剤
  • 天然由来物質
    • シイタケ菌糸体抽出物液剤
  • 生物由来の殺菌剤
    • 天敵等生物農薬
    • 天敵等生物農薬・銅水和剤

有機JAS殺虫剤

農作物に有害な昆虫を殺すための薬剤です。

  • 天然殺虫剤
    • 除虫菊乳剤(除虫菊から抽出したもので、あって、共力剤として、ピペロニルブトキサイドを含まないものに限る)
    • なたね油乳剤
    • 調合油乳剤
    • マシン油エアゾル
    • マシン油乳剤
    • デンプン水和剤
    • 脂肪酸グリセリド乳剤
    • ケイソウ土粉剤(保管施設に限る)
    • 燐酸りんさん第二鉄粒剤
    • メタアルデヒド粒剤(捕虫器の使用に限る)
  • 燻蒸剤くんじょうざい
    • 二酸化炭素くん蒸剤(保管施設に限る)
  • 生物由来の殺虫剤
    • 天敵等生物農薬
    • ミルベメクチン乳剤
    • ミルベメクチン水和剤
    • スピノサド水和剤
    • スピノサド粒剤
  • その他の殺虫剤
    • 還元澱粉でんぷん糖化物液剤

有機JASその他の薬剤や製剤

農作物に有害な昆虫をおびき寄せたり植物の生育を調整したり農薬の付きを良くするための資材です。天敵製剤は害虫を捕食したり害虫に寄生したりする生きた昆虫の製剤です。

  • 天敵
    • 天敵等生物農薬
      • BT水和剤、BT粒剤(生菌、死菌を問わない)
      • アカメガシワクダアザミウマ剤
      • アグロバクテリウム ラジオバクター剤
      • アリガタシマアザミウマ剤
      • イサエアヒメコバチ・ハモグリコマユバチ剤
      • イサエアヒメコバチ剤
      • 非病原性エルビニア カロトボーラ水和剤
      • オンシツツヤコバチ剤
      • キイカブリダニ剤
      • ククメリスカブリダニ剤
      • コニオチリウム ミニタンス水和剤
      • コレマンアブラバチ剤
      • サバクツヤコバチ剤
      • シュードモナス フルオレッセンス水和剤
      • シュードモナス ロデシア水和剤
      • スタイナーネマ カーポカプサエ剤
      • スタイナーネマ グラセライ剤
      • ズッキーニ黄斑モザイクウイルス弱毒株水溶剤
      • スワルスキーカブリダニ剤
      • タイリクヒメハナカメムシ剤
      • タラロマイセス フラバス水和剤
      • チチュウカイツヤコバチ剤
      • チャハマキ顆粒病ウイルス
      • リンゴコカクモンハマキ顆粒病ウイルス水和剤
      • チャバラアブラコバチ剤
      • チリカブリダニ剤
      • トウガラシマイルドモットルウイルス弱毒株水溶剤
      • トリコデルマ アトロビリデ水和剤
      • ナミテントウ剤
      • バーティシリウム レカニ水和剤
      • パスツーリア ペネトランス水和剤
      • ハスモンヨトウ核多角体病ウイルス水和剤
      • バチルス アミロリクエファシエンシス水和剤
      • バチルス シンプレクス水和剤
      • バチルス ズブチリス水和剤
      • ハモグリコマユバチ剤
      • ハモグリミドリヒメコバチ剤
      • バリオボラックス パラドクス水和剤
      • ペキロマイセス テヌイペス乳剤
      • ペキロマイセス フモソロセウス水和剤
      • ボーベリア バシアーナ剤
      • ボーベリア バシアーナ水和剤
      • ボーベリア バシアーナ乳剤
      • ボーベリア ブロンニアティ剤
      • ミヤコカブリダニ剤
      • メタリジウム アニソブリエ粒剤
      • ヤマトクサカゲロウ剤
      • ヨーロッパトビチビアメバチ剤
      • ラクトバチルス ブランタラム水和剤
      • リモニカスカブリダニ剤
  • 昆虫性フェロモン剤
    • 性フェロモン剤(農作物を害する昆虫のフェロモン作用を有する物質を有効成分とするものに限る)
      • 誘引効果があるもの
        • オキメラノルア剤(98%製剤)
        • キュウルア液剤ケルキボルア剤
        • サキメラノルア剤
        • フォールウェブルア剤
        • リトルア剤
      • 交尾阻害効果があるもの
        • アリマルア・オリフルア・トートリルア・ピーチフルア剤
        • アルミゲルア・ウワバルア・ダイアモルア・ビートアーミルア・リトルア剤
        • アルミゲルア・ダイアモルア剤
        • インフェルア剤
        • オキメラノルア剤(96.5%製剤)
        • オリフルア剤
        • オリフルア・トートリルア・ピーチフルア剤
        • オリフルア・トートリルア・ピーチフルア・ピリマルア剤
        • コッシンルア剤
        • シナンセルア剤
        • ダイアモルア剤
        • トートリルア剤
        • ピーチフルア剤
        • ビートアーミルア剤
        • ブルウェルア・ロウカルア剤
        • マシニッサルア剤
        • メチルオイゲノール剤
        • リトルア剤
  • その他誘引剤
    • メタアルデヒド粒剤(補虫器に使用する場合に限ること)
  • 蒸散抑制剤
    • ワックス水和剤
  • 生物由来の植物生育調整剤
    • クロレラ抽出物液剤
    • 混合生薬抽出物液剤
  • 展着剤
    • 展着剤(カゼイン又はパラフィンを有効成分とするものに限ること)

有機JAS特定防除資材

通常は農薬として使われない資材です。

  • 重曹じゅうそう
  • 食酢
  • 次亜塩素酸水じあえんそさんすい(塩酸又は塩化カリウム水溶液を電気分解して得られるものに限る。)
  • エチレン
  • 土着天敵
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有機JAS薬剤一覧

有機JAS規格における薬剤とは、有害動植物を禁避きんひするために使用が認められる薬剤のことです。薬剤には次のようなものがあります。農産物に直接使ってはいけません。

  • 除虫菊じょちゅうぎく抽出物
    • 共力剤としてピペロニルブトキサイドを含まないものに限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • ケイ酸ナトリウム
    • 農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • カリウム石鹸(軟石鹸)
    • 農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • エタノール
    • 農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • ホウ酸
    • 容器に入れて使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • フェロモン
    • 昆虫のフェロモン作用を有する物質を有効成分とする薬剤に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • カプサイシン
    • 忌避きんひ剤として使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • ゼラニウム抽出物
    • 忌避剤として使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
  • シトロネラ抽出物
    • 忌避剤として使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
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有機JAS栽培の要点

有機JASの審査に合格するためには、上記の以外の薬剤を使用することはできません。多年生の植物では最初の収穫前よりも3年以上前から、それ以外の作物では植え付け2年以上前から規格に沿っていなければいけません。2年以上前から規格に適合した農地は収穫前1年以上前から規格に沿って栽培する事、そして隣接する農地から禁止物質が入って来ないようにします。風や雨水などにより禁止物質が飛んでこないようにします。遺伝子組み換え品種も使用できません。化学肥料も使えません。肥料や土壌改良剤は化学的処理を行っていないものに限定されます。化学的処理とは化学的処理(燃焼、焼成、溶融ようゆう乾留かんりゅう及びけん化を除く)によって物質を別の物質に変化させること、化学的処理によってできた物質を添加することです。

乳酸菌

自然農法でありがちな米ぬかなどの植物を発酵させて作った乳酸の使用については2021年の時点で土壌の酸度の調整のみ使用が許可されています。植物性乳酸を殺菌目的などに使用することはできません。食酢については何も注意が書かれていません。

石灰

自然農法でありがちな石灰を植物に散布することについて、有機JAS規格では農薬として使ってよいとは書かれていません。生石灰はボルドー剤の調整用として添加することが認められています。石灰は化学的処理を経ていないものに限ります。

燐酸しょうさん

よう燐などの燐酸肥料についても基準が設けられています。カドミウムがリン1kgに換算して90mg以下のものしか使えません。グアノ(屎)に注意書きはありません。骨粉こっぷんなど動物性資材は化学的処理を行っていないもの、天然由来のものに限ります。

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後記

有機JAS認定事業者への道のりは申請や登録更新に費用がかかるなど厳しいという話もあります。まず農家などの事業者は農林水産大臣に書類を提出します。次に独立法人農林水産消費安全技術センターから有機JAS認定検査員に来てもらって場や工場などを実地検査してもらいます。検査に合格すると農林水産大臣が事業主を登録します。ちなみに有機JAS認定検査員実地検査の方法 – 農林水産省というページでは贈答や飲食接待の禁止が明記されています。

登録までのハードルが高いため特別栽培農産物といって慣行栽培の農薬や肥料を50%以下に抑えた減農薬栽培の認証制度も農林水産省によって整えられています。

また、有機JASという栽培規格はご家庭の趣味栽培においても農薬使用を減じる目安として役立つ指標です。私の家庭果樹の栽培方法もこの規格に準じています。個人的に使用頻度が高いものは柑橘類と落葉果樹に対してマシン油乳剤とバチルス菌製剤、ブドウに無機銅です。

尚、このページの執筆に要した本やページは次の通りです。

引用元

本文中で紹介できなかった箇所についてはこちらで示しています。

  • 有機農産物 検査認証制度ハンドブック (平成24年度 改訂第5版)- 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/nosan_handbook_5.pdf
  • 有機農産物の農林規格 (平成29年度 最終改正版) – 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki_sizai_list-1.pdf
  • 有機農産物の JAS 規格別表等資材の適合性判断基準及び手順書(平成28年4月改訂版)- 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki_sizai_list-1.pdf

詳しい基準については農林水産省の文書をご覧ください。平成時代の文書ですが改訂が無いので令和3年の時点で最新の基準となっています。

このページの出版・改訂記録

この記事を最初に書いたのは2021年1月17日です。1月23日に改訂しました。本ページがみなさまのお役に立てれば幸いです。尚、文章については何度も見直しておりますが至らぬ時はご容赦ください。

有機JAS農薬
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