カイガラムシの生態と防除方法についての入門知識

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お庭や畑の厄介者、カイガラムシを駆除する方法について。せっかく育てたお花や野菜、果樹に付いて繁殖して植物の栄養を奪うカイガラムシ。この虫は植物の汁を吸って生きています。この虫のせいでバラの木が枯れたり果樹や野菜に実がならなくなるのでとても迷惑です。何とかして駆除する方法は無いかと思いカイガラムシに対して殺虫剤を散布したり手で取ったりしても根絶することができません。そんなカイガラムシについて詳しく学んでいきたいと思います。

話が長くなるのでまず先に結論を申します。カイガラムシはたいへん多産なため完全に駆除することはできません。できることはさまざまな手法を用いて増殖を抑えることです。最も手軽な方法はカイガラムシが最も増える時期に農薬を散布します。散布のタイミングは年に2~3回、しっかり農薬を使う場合は4~6回あります。散布時期はカイガラムシの種類によって異なります。しかし殺虫剤を使えば天敵まで殺してしまうことになります。慎重に選んだ農薬を、卵から孵ったところを狙って撒くのです。あるいは産卵時期が終わりそうな時期にももう一度散布します。カイガラムシは脱皮を2~3回繰り返すので脱皮阻害剤という薬もあります。種類によっては天敵製剤も有効です。冬季のマシン油使用が有効な種類とそうでない種類がいます。最終的に手で取るという方法も。

生態や詳しい内容は続きをお読みください。

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カイガラムシとは

カイガラムシはカメムシ目ヨコバイ亜目腹吻ふくふん群カイガラムシ上科の昆虫です。果樹や花木、野菜などいろんな植物に付く昆虫です。カイガラムシのことを英語でscale insectスケール・インセクト(マルカイガラムシ類)やmealybugミーリーバーグ(コナカイガラムシ類)、soft insectソフトインセクト(カタカイガラムシ類)などと言います。学名はCoccoideaコッコイデアです。カイガラムシは熱帯に起源を持ち約3億年前には既に地球上に存在していました。

種類

カイガラムシの種類は発見されたものだけでも何と世界で数千種類にも及びます!我が国でもカイガラムシの種類は12科約400種類にのぼります。日本ではナシやリンゴの木にはクワコナカイガラムシなどが付き、ブドウの木にはクワコナカイガラムシとフジコナカイガラムシなどが付き、柿の木にはフジコナカイガラムシなどが付きます。ミカンなどの柑橘類にはミカンネコナカイガラムシやヤノネカイガラムシ、ミカンコナカイガラムシ、ワタフキカイガラムシなど複数のカイガラムシが付いて汁を吸って木を弱らせます。茶の木ではクワシロカイガラムシなどが繁殖します。球根にはキュウコンコナカイガラムシが発生します。梅やスモモ、桃やネクタリンの木にはウメシロカイガラムシなどが発生します。他にマルコナカイガラムシやナガオコナカイガラムシ、モミジワタカイガラムシなどがいます。

カイガラムシはいくつかの科に分類されます。代表的な科はマルコナカイガラムシ科とコナカイガラムシ科、カタカイガラムシ科、フクロカイガラムシ科、ワタフキカイガラムシ科などです。

花木や野菜など種類を問わずさまざまな植物にカイガラムシが発生します。

詳しくは「カイガラムシの種類のページ」をご覧ください。農産物に寄生する種類だけでもとても多くてびっくりしますよ!

カイガラムシが大量発生すると野菜や果物が商品にならなくなり、酷くなると樹木が弱って枯れてしまうこともあります。その排泄物を栄養源とする菌が繁殖して植物の光合成が邪魔され美観を損ねるだけでなく立ち枯れの原因となります。

ロウムシ

ロウムシ類(英語名Wax scales)はカイガラムシの仲間です。カメムシ目ヨコバイ亜目カタカイガラムシ科に属します。赤茶色い体のルビーロウムシ(学名Ceroplastes rubens, 英語名Red wax scale)、白い体のツノロウムシそして白っぽい体をしていて亀のような窪みのあるカメノコロウムシが代表的です。

イセリアカイガラムシ

イセリアカイガラムシ 生態と防除を考える
イセリアカイガラムシ

イセリアカイガラムシ(Icerya purchasi)はワタフキカイガラムシの一種です。学名はIcerya purchasiイチェリアポルチェージです。英語名はCottony cushion scaleコットニー・クッション・スケイルです。オーストラリア原産の昆虫です。イセリアカイガラムシの成虫は白い綿状のもので覆われており、体内に数百個の卵を抱えています。雄雌同体のため繁殖力が旺盛でいったん樹木に取り付くと根絶することは困難です。雄は稀に発生します。枝の裏側や葉の裏の葉脈の主脈に沿って大量発生します。ミカンなどの柑橘類の大敵です。

私の庭ではブルーベリーの木やナンテンの木のような鑑賞樹でもこの白い虫が発生しています。イセリアカイガラムシは苗木の導入とともに昭和時代に帰化した昆虫です。天敵はベダリアテントウムシvedalia beetleという外来のテントウムシです。ネオニコチノイド系のイミダクロプリドはイセリアカイガラムシに対して効果がありません。

コチニールカイガラムシ

コチニールカイガラムシは赤い色素を生み出すカイガラムシです。学名はDactylopius coccus Costaアクティロウピュス・コックス・コスタ、英語名はCochinealコチニールです。古くから染料に用いられてきました。この虫はサボテンに生息しています。日本語では臙脂虫えんじむしと呼びます。このカイガラムシから取れるカルミン酸という色素は食品や医薬品、布地の染色に用いられてきました。

ラックカイガラムシ

ラックカイガラムシは赤茶色のカイガラムシで塗料や染料に使われて来ましした。塗料を意味するラッカーの語源となった昆虫です。この虫の排泄物を集めてシェラックという樹脂とラックダイという塗料を作ります。中国では紀元前2000年頃には既に使われており漢方薬としても用います。日本ではラックダイのことを紫鉱しこう臙脂えんじと呼びました。ラックダイを使った染色はラック染めと言います。ラックダイは木工などの塗料や金属の防さび剤や絶縁材、医薬品や食品のコーティングなどに用いられます。

イボタロウムシ

イボタノキやネズミモチなどの枝に寄生するイボタロウムシはカタカイカイガラムシ科に属する昆虫です。日本や中国、インドなどに生息しています。イボタロウムシから取れたロウは日本では蝋燭ろうそくや扉の潤滑剤、製品の艶出しや防水防湿剤、化粧品や医薬品の原料として使います。会津蝋あいずろうが代表的です。

カイガラムシの生態

これらのカイガラムシは葉の裏の主脈や枝に取り付いて植物の樹液を吸って暮らしています。気温が適度にあれば爆発的に増殖します。カイガラムシの排泄物はアリの大好物です。アリがカイガラムシを天敵から守ります。カイガラムシから出された甘い汁に菌が付いて煤病すすびょうを起こします。煤病になった枝や果実は煤で真っ黒になり葉の光合成を邪魔して樹木を弱らせます。カイガラムシの排泄物はこうやく病という枝が茶色い菌で覆われる病気の原因にもなります。植物に対するウイルス病を媒介することもあるのでウイルスフリーのブドウを植えてもリーフロール病に感染することがあります。

幼虫

カイガラムシの幼虫は成虫と異なり生まれてすぐに餌場を求めて動き回ります。中には空を飛ぶタイプもいます。生まれてすぐに安住できる場所へ移動します。成長すると脚がなくなる種類や、脚が復活する種類、脚を持ったまま種類がいます。コナカイガラムシやワラジカイガラムシは一生脚を持っています。マルカイガラムシは二齢になると脚が消失して動けなくなります。カタカイガラムシは脚があるのに成虫になると動けなくなります。マツモグリカイガラムシは二齢と三齢の間は脚がなくなり成虫になると脚が復活します。

生まれてすぐのカイガラムシはロウ物質が分泌されていません。生まれてから数時間後~1日後に植物に定着して餌を食べ始めるとワックスや排泄物を分泌しはじめます。フクロカイガラムシ族は殻のうという袋の中に入ります。

メス

カイガラムシのめすはフェロモンを出しておすを誘います。交尾してから十日くらいで雌は卵を産みます。一度に産む卵の数は100個程度で種類によっては200個~300個産むものまでいます。ツノロウムシやルビーロウムシ、ヒラタカイガラムシなどは単為生殖たんいせいしょくで子孫を残します。雌は2~3回の脱皮を繰り返し四齢で成虫になります。

オス

カイガラムシの雄は寿命が数日~一週間と短いです。雄は羽を持っています。フェロモンを頼りに雌を見つけます。雄は一齢で脱皮だっぴをして二齢幼虫になると前蛹ぜんよう後蛹こうようを経て成虫になります。雄は一対の羽と三対の脚、触覚と単眼たんがんを有します。雄は口器こうき(餌を食べる口)を持っていないので食事をすることができません。

発生時期

おおよそですが、クワコナカイガラムシの幼虫の発生時期は5月上旬~中旬、7月上旬~中旬、8月下旬~9月下旬の年三回が最も多いです。気象条件によって発生時期は1~2週間程度前後します。ワタフキカイガラムシでは5月中旬~下旬、ロウムシでは7月上旬~中旬など種類によって発生のピークが異なります。

発生場所

カイガラムシは葉の裏の主脈しゅみゃくや小枝の裏、幹の裂け目など安全な場所を好みます。

天敵

カイガラムシの天敵は寄生バチやタマバエなどの寄生バエ、コクロヒメテントウような寄生性昆虫のほか、細菌やウイルスといった微生物、捕食性の昆虫などです。ワタフキカイガラムシの天敵はベダリアテントウとその幼虫です。栗などに付くタマカイガラムシの天敵はアカホシテントウです。ヤノネカイガラムシの天敵はヤノネキイロコバチやヤノネツヤコバチです。クワコナカイガラムシの天敵はクワコナカイガラヤドリバチです。カゲロウなどの捕食昆虫も天敵です。コナカイガラヤドリクロバチ、ルリコナカイガラヤドリバチ、シロツノコナカイガラヤドリバチ、イエクロヒメカゲロウ、フタホシヒメテントウなども天敵です。

カキの害虫フジコナカイガラムシに対してはフジコナカイガラクロバチ、フジコナカイガラヤドリトビコバチなどの天敵がいます。

チャノキに対してはチビトビコバチ、ベルレーゼコバチ、ナナセツトビバチなごの天敵がいます。他にはヒメアカボシテントウ、ハレヤヒメテントウ、キムネタマキスイなどがいます。ヤノネカイガラムシに対しヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチがいます。ルビーロウムシに対してルビーアカヤドリコバチなどが天敵です。

テントウムシの幼虫はカイガラムシと似ているので間違えて防除しないように注意します。

糸状菌などカイガラムシに対する病原菌も天敵です。

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カイガラムシの防除方法

カイガラムシを駆除するには卵から幼虫が孵化うかした直後を狙います。カイガラムシは成虫になると体がロウ物質で守られ農薬の効き目が弱くなるからです。また、カイガラムシの卵もロウ物質や親の体に覆われています。温暖な年になると産卵~孵化する時期が早まります。孵化を確かめるには直接目で見るしかありません。

殺虫剤の散布

発生のピークが年に三度程度あり、その度に農薬を日数を開けてそれぞれ1~2回程度散布します。農薬には有機リン系、ネオニコチノイド系、カーバメート系、合成ピレスロイド系、脱皮阻害剤だっぴそがいざいなどがあります。毒性が強く危険ですのでこの農薬の取り扱いには注意が必要です。他の昆虫や動物、人体に対しても影響があります。薬剤抵抗性が生じ農薬が効かなくなる種が発生するおそれがあります。防毒マスクや保護メガネ、防護服が必要です。噴霧器は通常よりも長いノズルや散布方向を調節するカバーを使います。これらの殺虫剤は天敵も殺す可能性があります。

誘殺バンド

いわゆるこも巻きのことです。9月頃に幹に菰を巻いて2月に外して処分します。初めての人でもできる安全な駆除方法です。菰の材質はわらや紙、布など越冬害虫が安心して隠れることのできる材質なら何でも使えます。

マシン油の散布

冬季にマシン油でカイガラムシを覆って酸欠にして駆除します。ロウ系のカイガラムシに対して効果があります。ワタ系のカイガラムシに対しては効果が薄いです。防毒マスクや保護メガネ、噴霧器が必要です。

石灰硫黄合材の散布

冬季に散布する農薬です。カイガラムシから酸素を奪って駆除する薬剤です。効果の持続期間は10日程度です。危険ですのでこの農薬の取り扱いには注意が必要です。営農している人以外は使わないほうがよいと思います。防毒マスクや保護メガネ、防護服、散布器具が必要です。

袋掛け

果実に袋を掛ける方法です。初心者の人におすすめの防除方法です。私の経験では袋の内部にカイガラムシが繁殖してしまい、むしろ袋を掛けなかったほうが良かったたことがありました。逆に袋を掛けたほうが良かった場合もありました。袋掛けをする場合はしっかりと口を閉じないとカイガラムシが中に侵入します。袋掛けのタイミングが遅すぎると袋の中で大繁殖します。楽しみにしていた柑橘類の収穫も袋を開けて見てコナカイガラムシがウヨウヨいたのでびっくりしました!

天敵製剤

ベダリアテントなどの昆虫を農地に導入します。天敵にも好みのカイガラムシがあるのですべてを天敵製剤で抑制することはできないと思います。

テデトール

最初に誰が言いだしたか分かりませんが、手でカイガラムシを取る方法です。私の経験では繁殖力が旺盛なカイガラムシに対して効果はありませんでした。枝ごとトールも樹勢が弱くなってしまいます。また、紐を巻いたところにカイガラムシが付着しやすいので誘引の際には紐を使わないほうがよいかもしれません。初心者の方におすすめの駆除方法です。

農薬の散布時期について

以上のことからカイガラムシにいつ頃農薬を散布すれば良いのか計算する方法について考えてみました。まずカイガラムシは種類によって孵化時期のピークが異なりますのでそれぞれの種類の孵化時期を調べます。

次に「気象庁の過去の気象データ検索」を使って調べます。

検討例

以下は私の例です。

まずは5月の過去の平均気温がどのようになっているか調べました。私の地域では5月はじめの平均気温は15度です。5月中旬には平均気温が17度となります。少し遡って4月の下旬の平均気温を見てみると14度です。私の住んでいる地域は暖か過ぎず、寒すぎない中間の地域です。

参考にした書籍「カイガラムシ おもしろ生態とかしこい防ぎ方」の63ページデータを借りて推測すると、クワコナカイガラムシの孵化幼虫の数を調べる試験が行われたのは鳥取県であると推察されます。鳥取県鳥取市の過去の平均気温は5月はじめで16度、5月中頃で17.5度となっています。おそらくこの17度付近が第一世代のクワコナカイガラムシの孵化幼虫が最大になる時期であると考えられます。

念のために1987年の5月上旬に第一世代の発生のピークが来た時の一日の平均気温を調べてみると平均気温は18度ありました。

このことからクワコナカイガラムシの第一世代の幼虫の発生ピークはその日の平均気温が17度~18度であると考えられます。

このことが他のカイガラムシにも当てはまるかわかりませんが、クワコナカイガラムシの例で述べると一日の平均気温が17度を超えたら第一回目の散布を考えたほうがよいと思われます。ハウス無加温栽培ではそれよりも10日程度幼虫発生のピークが早くなると考えられます。

一回あたりの各世代の孵化が続く期間はおよそ2週間~1か月程度です。この世代に対して農薬を2回散布するとすれば、ピークの時と、発生が終わりそうな時の2回に農薬を散布すれば多くのカイガラムシの幼虫に対し殺虫効果があると思われます。もしも1回限りの散布に限る場合はピークをつけた頃が最も多くのカイガラムシの幼虫を駆除することができるという計算です。

他のカイガラムシやロウムシの幼虫が親の体から出て来る時期は種類によって異なります。詳しくは参書籍「カイガラムシ おもしろ生態とかしこい防ぎ方」をお読みください。

効き目あり!市販の殺虫剤

私の経験をお話いたしましょう。長年テデトールとマシン油乳剤で対応してきたレモンの木。それでは木が大きくなってもイセリアカイガラムシが大繁殖して果実が実ることができませんでした。2020年、ついに有機栽培では我慢できなくなてレモンの木に住友化学園芸のベニカ水溶剤と、フマキラーのカダンDXというピンク色のボトルのスプレーをそれぞれ1回ずつ散布しました。すると、初めてレモンに実がなりました!市販のお手軽園芸スプレーでも効果がありました。

参考文献

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