カメムシの生態と防除方法についての入門知識

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悪臭を放ち洗濯物やカーテンに臭を付けるので人々から嫌がられるカメムシ。果樹や野菜などの農産物に深刻な被害を与えるカメムシという昆虫の生態や駆除方法について。カメムシはトマトなどのナス科の野菜や大豆、トウモロコシなどあらゆる野菜の汁を吸う昆虫です。カメムシには多くの種類があり灰色や茶色、緑色で五角形のような形をした害虫などさまざまです。カメムシは梨や桃、ミカン、リンゴ、ビワなどさまざまな果樹の果実に加害し、今では農家の厄介者として知られています。カメムシを殺虫剤でやっつけようと飛来を待ち構えていても肩透かしを食らったり、放っておくと知らない間に大発生して農薬を散布しても手遅れになったり完全には駆除し難いところがカメムシの特徴です。出来れば彼らには市街地まで出て来て欲しくない、森で大人しくしていてほしい厄介者の昆虫です。でもその姿を近くで見ると、意外に可愛いいです。

このページでは果樹に寄生するカメムシを中心に解説しています。

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カメムシとは

カメムシとは、カメムシ目とカメムシ亜目に属する昆虫のうち、一部の種類を除いた虫の総称です。日本では悪臭を発する害虫として知られています。カメムシは農作物に加害する害虫です。カメムシが人間に直接害を与えることはありません。カメムシが私たち日本人に害虫として知られるようになったのは第二次世界大戦後からです。

カメムシの種類

カメムシは種類がたいへん多く日本に数百種類がいます。そのうちの数十種類が果樹や農作物に寄生する害虫として発見されています。稲に加害し斑点米の原因となるのはクモヘリカメムシやミナミアオカメムシ、シラホシカメムシなどがいます。大豆を加害するのは稲を加害するカメムシに加え、ホソヘリカメムシなどがいます。果樹を加害するのはチャバネアオカメムシやツヤアオカメムシ、クサギカメムシなどが代表的です。

チャバネアオカメムシ

全国に生息するカメムシです。果樹やトマトなどを加害します。成虫は黄緑色の体をしていて羽が茶色いです。本拠地は森林です。針葉樹の球果を主食とします。発生時期は予測できても発生量は不確定です。飢餓に強いです。繁殖は一年間に二世代~三世代まで可能です。一度に14個の卵を産みます(卵管が14本あるため)。卵の色は黄灰色です。五齢幼虫を経て成虫になります。落ち葉などに隠れて越冬します。

ツヤアオカメムシ

西日本に生息するカメムシです。果樹やトマトなどを加害します。成虫は全身が黄緑色のカメムシです。本拠地は森林です。針葉樹の球果を主食とします。発生時期は予測できても発生量は不確定です。飢餓に強いです。一度に14個の卵を産みます(卵管が14本あるため)。卵の色は黄灰色です。五齢幼虫を経て成虫になります。樹上で越冬します。

(私の畑ではトマトを非常に好み、少数は葉の裏に隠れたりして庭や畑で越冬します。)

クサギカメムシ

全国に生息するカメムシです。果樹を加害します。成虫は全身が焦げ茶色をしています。本拠地は森林です。針葉樹の球果を主食とします。発生時期は予測できても発生量は不確定です。飢餓に強いです。繁殖は一年間に一世代程度です。一度に28個程度の卵を産みます。卵の色は水色です。五齢幼虫を経て成虫になります。隙間を好んで越冬します。

(私の畑ではピーマン類に発生し、茎に繋がったまま繁殖します。)

クモヘリカメムシ

成虫は縦に細長く緑色の体に羽は薄い茶色です。稲に加害します。稲の穂が出始めた時期に発生します。

ミナミアオカメムシ

成虫は緑色の丸い背中のふちどりと中央にまだらの水玉模様があります。稲に加害します。幼虫は背中全体に水玉模様があります。稲の穂が出始めた時期に発生します。ミナミアオカメムシはイネ、ムギ、大豆、果菜類を食します。温暖化により生育域が北上しています。

(私の畑ではトマトでよく見かけます。)

シラホシカメムシ

成虫は茶色い体の背中に白い丸模様が二つ付いています。稲に加害します。稲の穂が出始めた時期に発生します。

ホソヘリカメムシ

成虫は細長い茶色の体をしています。大豆に加害します。大豆の鞘が出来始める時期に発生します。

ミナミトゲヘリカメムシ

縦長の体に茶色い背中のカメムシです。体長20mm前後です。果樹を加害します。

エサキモンキツノカメムシ

背中に白っぽいハート型の模様のあるカメムシです。背中は茶色く体長12mmほどです。果樹を加害します。

オオクモヘリカメムシ

縦長で頭は緑色、羽は薄茶色のカメムシです。果樹を加害します。ネムノキを宿主とします。

カメムシの発生時期

果樹に寄生するカメムシの発生時期は一定していません。米や大豆、野菜に付くカメムシは稲穂や大豆、野菜の果実が出来始める時期に飛来します。飛来時期はカメムシの種類や作物によってさまざまですが、カメムシは温かな時期から秋頃まで活発に活動します。晩秋になると餌となる果実や農作物が無くなるので農地からほとんど姿が見えなくなります。

カメムシの歴史

カメムシが日本で害虫として知られるようになったのは昭和の終わり頃からです。その背景には戦後に林野庁によって木材を大量生産するために造林が進められ、カメムシの餌となる杉や檜などの針葉樹林が増えたからと言われます。増えたカメムシは新たな餌場と繁殖場所を求めて果樹園や畑にやって来るようになったのです。桜の実もカメムシの餌となるので街路樹の植林とも関係があるかもしれません。

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カメムシの生態

カメムシはもともと熱帯~亜熱帯の昆虫で温暖化により生息域が年々北上しています。カメムシの栄養源は果実の実の部分ではなく種子です。飼育する時には生の落花生や大豆でも立派な餌になります。カメムシの種類にもよりますが杉やひのきや松の実のほか、リンゴ、クリ、大豆、落花生の種子の栄養が飼育する時の餌に適していると思われます。

カメムシの吸汁

カメムシの口は針のようになっており、口針(こうしん)を言います。大腮(だいし)という鋸状の口針の先端で穴を開け、小腮(しょうし)の唾液通過管から唾液を出して種子や果実を溶かして餌通過管から汁を吸います。

果実や種子の変色・変形

カメムシにリンゴやナシ、柿やトマトなどの果実や大豆や稲の種子を吸汁されると果実が変色したり変形したりします。稲では米に黒い斑点が出来ます。大豆は変色したり変形して枝豆となると味も腐ったような風味となりおかしくなってしまいます。トマトも吸汁されたところは腐ったような色に変わってしまいます。リンゴやナシの実は黒くなったり変形してします。

カメムシと同様に他の害虫も農作物を吸汁するため単に吸汁痕を見ただけでは何の害虫の仕業か見分けが付きにくいです。栄養不足やウイルス病によっても果実が変形するので一見すると見分けが困難です。

カメムシの繁殖

カメムシは暖かい気温と生殖に適した日長にっちょう、栄養豊富な餌があれば繁殖します。卵を産める日長は種類によって異なります。雌が生む卵の数や回数は種類によって異なります。雌は種類により一度に十数個から三十個くらいの卵を産みます。雄は栄養状態が良く体力がある者が雌と交尾する傾向にあります。カメムシの交尾は昼に行われます。7月頃に越冬カメムシの出産のピークを迎えます。

カメムシの生育

カメムシには幼虫から蛹の段階を経て成虫になる種類と、蛹にならずに成虫になる種類がいます。生育までの日数は気温と関係があり、気温が暖かいほど成虫までの生育日数が短くなります。生育適温は25度付近と思われます。

カメムシの越冬

カメムシは気温が低くなると森林の適度に温かい場所に隠れて越冬します。暖冬であればカメムシの生存率が上がり、厳冬であれば冬を越せないカメムシもいます。カメムシの種類によって好みの越冬場所は異なります。そして温かくなった4月に活動を開始します。

カメムシの寿命

カメムシの寿命は約一年です。

カメムシの天敵

カメムシの天敵はクモなどの捕食性昆虫ではなく寄生バチや寄生バエ、菌やウイルスなどです。

主な天敵

チャバネクロタマゴバチ、カメムシタマゴトビコバチ、マルボシヒラタヤドリバエ、クモ、アリ、オオトビサシガメ、シオヤアブ、昆虫糸状菌、昆虫病原性ウイルスなど。

カメムシの発生量

カメムシが大量発生するかどうかという発生量については毎年同じではありません。そのためさまざまな手法でカメムシの発生量を予測するする試みがなされています。カメムシの発生予想は各都道府県の農業関連の試験場で観測・予測しています。カメムシは変温動物なので暖冬で春の気温が高ければ例年より早くに目覚めて行動が活発になると考えることができます。

カメムシの発生量の予測

主要なカメムシは森林を住み家としているので餌となる種類の木々の様子を観察して発生量を予測します。発生時期の予測方法はヒノキやスギなどの球果を調べて予測する方法と、その年の夏の気温を調べて翌年の発生を予測する方法があります。その年が猛暑であれば越冬するカメムシも多くなるので翌年のカメムシの発生量が多くなる傾向にあります。花粉の飛散量が多ければ実が多くなり、その年のカメムシの発生量も多くなります。カメムシの越冬個体数を調べて予測する方法もあります。カメムシの発生量にばらつきがあるのは餌となる針葉樹が隔年結果することも一因となっています。

自然界の餌の量に対しカメムシの量が多い場合、農地までやって来ます。

昨年の球果植物が豊産であれば翌年の夏月以降も大発生すると考えられます。昨年の球果植物が貧産であれば翌年の発生量が減ると考えられます。昨年の球果植物の出来栄えが平年並みかつ翌年の出来栄えも平年並み以上であればカメムシがその年に多く発生すると考えられます。

球果に口針が差し込まれた数を数えることでも発生量を予測できます。

カメムシの発生時期の予測

カメムシの発生時期は暖かくなった頃から始まります。4月からは梅や桃に早くから飛来します。5月からは梅や桃、スモモなど、7月からはカキやナシ、ブドウ、スモモ、桃など、8月以降はナシやリンゴ、カキ、桃、ブドウなど。飛来時期はおおむね一定しています。問題となっているのはその飛来量です。

カメムシの防除方法

カメムシの防除方法は栽培品目によって異なります。稲や小麦の場合、農協に頼んでヘリコプターやドローンで散布してもらいます。カメムシの駆除には合ピレスロイド系殺虫剤や有機リン系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤などが使われます。殺虫剤の散布はカメムシの天敵にも影響が及ぶので別の害虫が大量発生する場合があります。

殺虫剤

殺虫剤系の農薬には持続期間が短い物と長いものとがあります。有機リン系の殺虫剤は即効性がありますが持続期間は短いです。合ピレスロイド系殺虫剤は持続期間が短いものと長いものとがあります。合ピレスロイド系殺虫剤の中には殺虫効果が無くなった後にも吸汁を阻害する効果があるものがあります。ネオニコチノイド系農薬はカメムシに対する殺虫活性が弱く、吸汁阻害による被害の防止が主な効果です。残効期間は種類によって差があります。

作物に対して登録のある農薬しか使えません。作物によってカメムシが加害し始める時期が異なります。春に収穫を迎える果樹への加害は4月頃から、秋に収穫を迎える果樹への加害は7月頃から始まるようです。

禁忌灯

黄色蛍光灯やナトリウム灯を使います。チャバネアオカメムシに対して有効です。アオカメムシに対して効き目がありません。デメリットは灯りが作物の開花や結実、とう立ちなどに影響する可能性があります。

バンド誘殺

果樹や樹木の幹に菰(こも)を巻いて越冬のために集まった虫を殺す方法です。9月頃に撒いて2月頃に取り外して園から離れた場所で処理します。粗皮削りも行います。

糸状菌

天敵製剤です。集合フェロモンと併用して使います。設置場所や補習方法に知識や技術を要するため個人では取り組みにくい手段です。菌に対し耐性のあるカメムシが生まれる可能性があります。

集合フェロモン

カメムシが集まって来るフェロモン製剤です。殺虫剤など他の薬剤と併用します。フェロモン製剤でカメムシを集めて導殺します。

より詳しい防除方法は「果樹カメムシ おもしろ生態とかしこい防ぎ方」をご覧ください。

カメムシの予防対策

カメムシが来る前に予防するためには木材用の針葉樹林を減らすしかありません。しかしそうすれば他の害虫が増えるかもしれません。根本対策は考えるだけ無駄といえましょう。

カメムシの農作物への加害対策

作物の種類によりカメムシに適用のある殺虫剤は異なります。残効期間が短い農薬ではカメムシが来ていない時に散布しても効果が薄いと思われます。園地を網で囲っておけば鳥害対策や防獣対策、防風対策にもなるので一石二鳥ですが先ほども述べたようにデメリットがあります。

防虫ネット

カメムシを防ぎたい場所を覆います。農薬がいらない反面、蒸れやすいというデメリットがあります。園地全体を網で覆うためには単管パイプとジョイントの費用や基礎作りなどさらに費用がかかります。防風効果や少々の防寒効果もあります。しかし作りが甘いと強風が吹いたり雪が積もると網が崩れて中で作業できなくなってしまいます。

この方法では既に網の中にいるカメムシが喜んで大繁殖するというデメリットがあります。私の経験では網に少しの隙間が開いていると網の中がカメムシ天国になってしまいました。

果実袋

カメムシの加害を防ぐには、幼果の頃より果実袋を掛けるという方法があります。しかし果実が大きくなると袋と果実が密着するため袋の外側から吸汁されることがあります。カメムシは栗のような堅い皮にも穴を開けることができるのですから同じ袋を二重にしたとしても効果は限られるでしょう。

カメムシの住宅への侵入対策

カメムシの種類によっては隙間を好むものがあり、家に入れる隙間をなくしていくことが予防方法といえるでしょう。夜に窓を開けたままにしておかない。夜に洗濯物を干したままにしておかない。扉や窓の隙間を埋めておく。こういった対策を行うことでカメムシはある程度防げます。

また、周囲にカメムシの餌となる植物を植えないこと、雑草を生やさないこと、落ち葉を置いたままにしておかないこと、生きたカメムシをそのまま放置しておかないことでさらにカメムシが集まることを予防します。

カメムシ対策を謳った製品

家庭用のカメムシ防除剤としてはアース製薬のカメムシコロリという農薬があります。主成分はベンジルアルコールで屋外での使用に限られます。キンチョーのカメムシキンチョールという殺虫剤も販売されています。サンケミファ株式会社からはカメムシ退治プラス忌避防除剤という製品が販売されています。洗濯物を害虫から守る防虫ネットという物もあるようです。

結論

カメムシのことについて学んでみると新たな側面が見えて来ました。それは種子の栄養こそが子種の素ということです。少々脱線してしまいましたが我々人類も食べ物の脂肪分に富んだ部位を好みます。この事実は案外馬鹿にできないと思います。お子様にはナッツや脂身を食べさせると早く子孫が・・・なんてことを想像してしまいました。

話はもとに戻ります。少し考えればカメムシを防ぐためには気温25度あたりになって数日してから農薬を散布すれば殺虫量も多くなるのではないかと思います。しかしこのやり方ではカメムシがたくさん生じるまで待ち構えることになり、既に作物に口を付けられています。

越冬量が多い場合は飛来が始まった頃より残効性の長い薬剤で防除する。越冬量が少ない場合は7月以降から残効性の長い薬材の散布を始める。2週間して薬効が切れたらもう一度散布する。発生量が極めて少ない年には昆虫成長制御剤(IGR)や減農薬に切り替えて益虫を保護する。こういった方法が考案されています。

参考文献:「果樹カメムシ おもしろ生態とかしこい防ぎ方」堤隆文, 2003年

カメムシ 病害虫対策
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